新しい秩序の時代

提供: 有限会社 工房 知の匠

文責: 技術顧問 大場 充

旧版: 2019年8月8日

新版改訂: 2025年2月23日

目的とねらい

2019年に旧版の原稿をまとめたとき、著者は、前年にアメリカ合衆国大統領選挙で、それまで、政治家としては全く無名だった、元ニューヨークの実業家であり、その後テレビ・タレントとして有名だった初老候補者が、元大統領夫人で、前国務長官であった有力な候補者であった女性候補者との選挙戦を戦い、得票数では敗北したものの、米国社会の大統領選挙に特有な、各州の「選挙人」の獲得数で、トランプ候補に敗れました。その結果、米国の法律に従い、トランプ氏は、米国大統領に選ばれました。この選挙では、当時、アメリカ合衆国と対立していたロシア連邦の情報機関による、インターネットのSNSを活用した大統領選キャンペーンによる選挙妨害による、トランプ大統領候補への支援が、影響したものであったと結論付けられています。この大統領選挙の過程を見て、国家の首長選びについても、インターネットを介した世論の影響が無視できないものになりつつある状況を暗示していました。今日では、そのような事態は、2024移行の世界では、世界中で見られる現実になりつつあります。それは、現代の世界で、日本を含めたほとんど全ての社会を動かしている、「社会規範」が少しずつ変わっていることを物語っていると言えます。それが、この原稿をまとめるに至った理由です。

20世紀までの現代社会の倫理観や道徳観は、長く続いたヨーロッパの中世に少しずつ積み重ねられた人々の思想を基礎とした、ヨーロッパの倫理思想が基になり、18世紀に宗教改革を経たオランダやイギリスで始まった資本主義経済と、イギリス発祥の産業革命が融合した、科学技術、資本主義、帝国主義の時代に形成された価値規範が基になってきました。その価値規範を我々は「世界秩序」と呼びます。しかし、2000年以降の21世紀の世界では、その従来の世界秩序では容認できない世論も各国で形成されつつあります。科学技術の著しい進歩と、資本主義経済の限界を知らない貪欲さの追及は、これまでの世界では考えられなかったような人工物を作り出したり、金融サービスの新概念を生み出しました。コンピュータの開発によって、人間と機械の間の壁は、今や境目が「あやふや」になり始めています。そのような社会では、人間の行為だけに焦点を当てていた従来の「秩序」では、我々が生きる社会を矛盾なく営んでゆくことが不可能になるでしょう。今、人間社会は新しい秩序を模索し、打ち立てなければならない大きな歴史的転換点に立っています。ここでは、従来の秩序を振り返って考え、新しい時代の秩序に何が必要なのかを考え、議論します。